寛解した

調子を崩したという近況を共有してから1年、完全復活したと書いてから半年が経ち、最近ようやく寛解して (病状が治まり安定して)、 もとの日常が戻ってきたなぁという実感があります。具体的には薬の量がゼロになって無事に2ヶ月が経過しました。

心の不調を経験するのは人生で2度目ということもあり (前回は大学院修士のとき)、今回は自身の状況を冷静に把握することができていたような気がします。コロナ禍の海外で不調と向き合いながら生活するのはとても大変でしたし、学びがありました。中でも特に印象的なできごとが2つあったので、書き残しているメモとともにここに記録しておこうと思います。

好きなものについて語ること

Webを使って日本語でカウンセリングを受けてみたのですが、日々の行動が変わるには至らず、話をしたり聞いたりするのは難しいなと思いました。当時の自分はこう書いています。

カウンセリングを何度か受けてみたんだけど、本心で話すのが苦手なのか、話が違う方向に向かって余計に自分が嫌になってしまう。場の空気が良くなる方向に力が働く力場みたいなのを感じ取ってしまって、相手が興味ありそうな悩みを作って話してしまったり、すぐに「なるほど!解決しました!ありがとうございます!」みたいなことを言ってしまったりする。人の気持ちを考えられるときと考えられない (くらい切羽詰まっている) ときの振れ幅が大きくて、うまくコントロールできてない。

「他に何か話したいことはありますか?」「いえ、特にないです」「では少し早いですけど終わりにしましょう」「ありがとうございました」ということで、力場から離れると間が持たず、上手く悩み相談できないまま終わってしまう。話したいことの引き出しってみんなたくさん持ってるものなんだろうか?

自分について話すのが得意ではないからかカウンセリングの効果を得られない問題、その後いろいろ考えてみた結果、好きなものについて話すのが良いのかもしれないと思いました。

自分の場合、一番話せることは今作っているもののことで、作っているものにはその時好きなものの要素が必ず入っている。そして、好きなものがなぜ好きか、好きになったきっかけを説明することは、その時の関心事とか困り事を掘り下げることになる。調子が悪いときはだいたい (作りたいものを) 何も作ってないときなので、今作っているものの話ができない。でも好きなものの話はできるから、好きなものについて話しているうちに自分では気がつけなかった不調の原因が見つかったりするかもしれない。

初対面の人に「いま困っていることは何ですか?」と聞くのは結構無茶なことで、相手が自分から話せることから順に聞いていって課題を一緒に見つけるのがカウンセラーの役目のひとつなんじゃないかなぁ。もちろん困り事を直接聞いて欲しい人もいるはずなのでそれだけが正解ではなくて、事前アンケートみたいな形でカウンセリングに対する期待を聞いておけばミスマッチを防ぐことができるかも。

薬とプロダクティビティ

Escitalopramという薬を処方されて1年間服用しました。個人的には副作用である日中の眠気がつらく、飲み続けながら知的作業を伴う仕事を続けるのは難しいことかもしれないという不安がありました。飲んでいる日と飲んでいない日にできることの量は明らかで、少しでも早く飲まなくても良くなることを第一に考えて生活していました。

飲んでいる方が希死念慮が抑えられる感じはある。でもそれは思考がポジティブな方にシフトしたわけではなく、脳のクロックが抑えられて、ネガティブなことも含めて何かを考えるのがだるくなった結果のような気がする。薬を飲んでないときは締め切り前のギリギリな状態になれば「やるしかない!!!」みたいな力でアクセルを踏むことができるのだが、飲むと健康の優先度が上がってブレーキが勝手に掛かる。

何度か減らす挑戦をしていて、量を変えるたびに後頭部のあたりがビリビリして気になったり数日使い物にならなかったりして苦労しました。自分がどのような状態で今は減らし始めても大丈夫なのかを客観的に知る術がないのが大変でした。

増やしたほうがいいのか減らしたほうがいいのか分からない。いやいや、それを判断するのは自分じゃないんだけど、検査ができる病気や怪我と違って印象や話した内容が判断材料なので、調子よく振る舞えば減るし調子悪そうにすれば増える。それに意思を尊重するため結局「増やしたい?減らしたい?変えたい?」と聞かれる。それが分からないから病院に通ってる (た) んだけど...

4月以降、医師の休暇 (ドイツでは医師もしっかり長い休みを取る) や私の予定の兼ね合いで予約が取れず病院に通わなくなり、手元にある薬のストックをみて段階的に減らした結果、たまたまうまくいったという感じです。本来であればきちんと対話して減らしていくべきだと思います。

謝辞

結局いつもと同じ終わり方ですが、支えていただいた方々には大変感謝です。特に、試験的に作った日報コミュニティのメンバーや開発者の友達とは話ができて回復の励みになりました。SNSで読んだよボタンを押してくださった方々にも感謝したいと思います。1.5年ほど前に徴候が見られたころ、友達に最近眠れなくて困ってるんだよねと話したら、一時帰国の際にハーブティーを手渡してくれたのが嬉しかったです。どこかで見たことのあるパッケージだなと思いながらよく見るとドイツからの輸入品で、思わず2人で笑ったのは今でも良い思い出です。