COVID-19によって自他の状況が大きく変わる年だった。計画変更を余儀なくされて苦しい思いをしたり、これまで疎かにしていた生活を見直したり、忘れられない一年になった。ちなみにドイツの街の様子は、1-2月: 国外で流行っているという印象、3-5月: 1週間で急展開して以後ロックダウン、6-10月: 飲食店や小売店舗が営業再開、11-12月: 再びロックダウン、といった感じ。
研究
基本的に自宅で進め、オンラインで実施できない作業のみ換気された居室や会議室で行った。研究の大部分を人の行動計測が占めているので、実験を実施できないのは大変だった。はじめの頃は「収束するまでは文献調査などできることをやっていこう」と思っていたが、実験を再開できるようになるにはまだ時間がかかりそうなので、研究の方向を修正した。特に学生の学位に関わるようなプロジェクトについては、文書解析等の新しいテーマで進めたり過去に作成したデータセットを活用したりといった調整を行った。
手を止めて考える時期を過ごしたことで、今後の研究の方向性を見直す機会を得られたという良い側面もあった。自身の博論研究 (Meta-Augmented Human) の次の拡張の方向性として、時間軸、社会軸、コンテンツ軸のビジョンを示し、3名の博士学生に託すことになった。残念ながら年内に発表することはできなかった新しい活動がいくつかあり、それらは順次告知できると思う。
メンタリング
自身がディレクションする研究グループの規模が大きくなり、学生/スタッフ全員と1 on 1で話をする十分な時間を毎週とることが難しくなった。現在は博士学生とは毎週ミーティングを行い、修士学生には主に博士学生と研究してもらいつつ時々自分もミーティングに参加し、週に1度全体ミーティングを行う、という運用で進めている。
また、今年から未踏ジュニアのメンター (PM) になった。今年はRocatというモデルロケットSTEM教材の開発を行う饗庭さん・磯崎さん・大崎さん・寺門さん・弓削さんのメンタリングをさせていただいた。選考の時点では4人だったのが最初のキックオフミーティングで「実は開発メンバーがもうひとりいまして...」と切り出された時はびっくりしたけれど、Rocatは5人いたからこそ、ロケット本体・通信規格・プログラミングツール・データ可視化ツール・教材デザインを一気通貫して行うプロジェクトとして成功した。
講義
カイザースラウテルン工科大学でCollaborative Intelligenceという講義の一部を今年も担当させていただいた。事前に収録したビデオを見てもらうオンデマンド型に移行したのだが、これが非常に厳しかった。去年の講義資料もあるので大丈夫だろうと油断していた自分が悪い。インタラクションを前提にしていたためコンテンツが不足し (これは後になって思うと90分の講義だからといって90分話し続ければ良いというものではない) 、自分の話し方の下手さ (語彙、発音、テンション、...) にショックを受け、立ち直るまでにかなりの時間がかかった。
衣食住
衣類については基本的に日本に一時帰国したときに買っていたのだけれど、一時帰国が全くできない状態なので今年は6-10月頃の営業が再開したドイツで買った。今まで気が付かなかっただけで、普通に揃えられるなと思った。
外食ができなくなり、食事は新しい生活に慣れるまで特に苦労があった。5年間、パスタ茹でるかソーセージ焼くくらいしか自炊しておらず、ドイツのスーパーで初めて卵や牛乳を買うところからのスタートだった。半年かけて、1日に1食はちゃんとした食事を作れるようになった。
ほぼ毎日が在宅勤務になったため、作業環境や家具をアップデートした。個人的に買ってよかったと思うものはVOCOlincというメーカーのスマート電球で、リビング兼作業部屋を寒色、寝室を暖色に設定して時間帯によっても光量を変えることで、生活リズムにメリハリがつけられるようになった。虹彩の色が濃い日本人にとって、ヨーロッパの暗い照明や冬の日照量と向き合うには明かりの調整が不可欠だと思う。
総括
生活に時間や手間を投資することは仕事など打ち込みたいものに集中するためにも効率の良いことなんだと実感することができた。生活を変えることができたのは医療や生活必需品の販売・流通をはじめとするCOVID-19と戦っている方々のおかげであり、本当に感謝です。